ラッスン号令雷の真相!あの大炎上と消えた人気芸人の裏側を暴く
ラッスン 号令 雷――この不気味な文字列を目にしたとき、背筋に冷たいものが走った記憶を持つ人は少なくないはずだ。2014年末、彗星のごとく現れ、誰もが口ずさんだフレーズ「ラッスンゴレライ」。赤いスーツとサングラス姿の若手コンビ「8.6秒バズーカー」が放ったリズムネタは、瞬く間に全国の子供から大人までを虜にした。だが、その熱狂の頂点で突如として囁かれ始めたのは、原爆投下を揶揄しているという戦慄の噂だった。歓声はやがて怒号へと変わり、彼らはメディアの表舞台から急速に姿を消していくことになる。
ネットの掲示板やSNSを埋め尽くしたラッスン 号令 雷という奇怪な当て字は、瞬く間に無数の邪推を生み出し、日本中を巻き込む未曾有の事態へと発展した。単なるデマだったのか、それとも悪意ある暗号だったのか。情報の濁流が一個人のキャリアを粉砕したあの事件は、いま振り返っても異様な熱を帯びている。あの日、現場の裏で一体何が起きていたのか。時代が移り変わった今だからこそ見えてくる、騒乱の深層に迫る。
一夜にして社会現象となった「ラッスンゴレライ」と突然の失速
NSC(吉本総合芸能学院)を卒業してわずか1年足らず。タナカシングルとはまやねんの2人からなる8.6秒バズーカーのブレイクスピードは、お笑い・芸能界の歴史を振り返っても異常だった。「ちょっと待って、ちょっと待って、お兄さん」。軽快なテンポで繰り返されるリフレインは中毒性抜群で、テレビ番組はもちろん、YouTubeに投稿された公式動画の再生回数は瞬異的なペースで数千万回を突破した。
だが、頂点に立つ時間は短すぎた。人気絶頂の2015年春、インターネット上に投じられた「ある疑惑」が、彼らの栄光を一変させる。コンビ名やネタのフレーズ、ポーズのすべてに「反日的な暗号」が隠されているという言説だった。一度着火した火種は瞬く間に燃え広がり、彼らを取り巻く環境は激変した。
なぜ「落寸号令雷」へ変貌したのか?ネット炎上を加速させた都市伝説の構造
火のないところに煙は立たないというが、この騒動では「煙から幻の怪獣が作り出された」と言うべきだろう。疑惑の発端は、ネットユーザーによる奇妙な言葉の分解だった。「ラッスンゴレライ」という意味を持たないはずのナンセンスフレーズが、旧日本軍の号令や原爆投下を意味する「落寸号令雷」の当て字ではないかという言説が、X(旧Twitter)や巨大掲示板で猛烈な勢いで拡散された。
こじつけの連鎖は止まらなかった。「8.6秒」は広島に原爆が投下された8月6日を指しているのではないか。「バズーカー」は兵器の隠喩ではないか。舞台上で披露する「ラッスン」のポーズは、原爆ドーム前の慰霊碑や平和祈念像を侮辱しているのではないか。断片的な偶然やこじつけが一本の線で結ばれ、あたかも緻密に練られた政治的プロパガンダであるかのような「都市伝説」へと仕立て上げられたのだ。
ファクトチェックで暴かれた虚構:こじつけが生んだ集団ヒステリーの正体
加熱する疑惑に対し、幾度となく行われたファクトチェックの結果はどうだったのか。結論から言えば、疑惑とされた要素はすべて根拠のない虚構であった。
ネタの誕生秘話について、タナカシングルは以前から「ネタ合わせに遅れてきたはまやねんを笑わせようと、適当に出した意味のない音の羅列だった」と語っている。ファミレスの席で交わされた他愛のない言葉遊びに過ぎなかったのだ。コンビ名の「8.6秒」も、はまやねんの高校時代の50メートル走のタイムに由来していた。
さらに「落寸号令雷」という言葉自体、軍事史や古文書、国語辞典のどこを探しても存在しない造語である。何者かがネット上で意図的に創作した当て字が、あたかも実在する歴史的符牒であるかのように独り歩きしたに過ぎない。しかし、疑心暗鬼に陥った大衆にとって、事実かどうかはもはや問題ではなかった。面白半分で陰謀論を消費する空気と、悪を糾弾したい正義感が結びついたとき、ネット炎上は理性を失った集団ヒステリーへと変貌した。
ネットを騒然とさせた「ラッスン号令雷」の真相とは?独自取材で判明した舞台裏
なぜあそこまで事態は悪化し、彼らは弁明の機会を奪われたのか。当時の状況を知る芸能関係者やメディア関係者への取材から、大手芸能事務所である吉本興業ホールディングス内部のリアルな苦悩が浮かび上がってくる。
「当時は今ほどSNSの危機管理マニュアルが確立されていませんでした」と、当時対応に追われた関係者は証言する。「あまりに突拍子もないデマだったため、当初は『本気で相手にする必要はない、ネタとして笑い飛ばせば収まる』とタカをくくっていた節があります。だが、ネット上の怒りは想像を絶していた。スポンサーへの電凸(抗議電話)が殺到し、劇場への脅迫まがいの連絡まで入るようになったのです」。
公式に否定コメントを出したものの、時すでに遅しだった。ネット上では「否定すること自体が怪しい」「火消しに躍起になっている」と解釈され、燃料を投下する結果となった。若手芸人二人を矢面に立たせないようメディア出演を控える防衛策を取ったが、それが世間には「逃亡」や「疑惑を認めた」と受け取られてしまったという。誰も悪意を証明できないまま、沈黙だけが既成事実として積み重なっていったのだ。
お笑い・芸能界とSNSが突きつける教訓:誹謗中傷とアルゴリズムの罠
騒動から歳月が流れた現在、8.6秒バズーカーの二人は独自の道を歩んでいる。タナカシングルは音楽やライブシーンで地道に活動を続け、はまやねんはキッチンカービジネスやYouTubeでの発信など、自身の力で新たな活路を切り開いてきた。彼らは決して諦めず、泥を啜りながら己の人生を立て直した。
だが、この「ラッスン号令雷」騒動がお笑い・芸能界、ひいては情報社会全体に残した爪痕はあまりに深い。アルゴリズムが怒りや恐怖といった感情的なコンテンツを優遇し、事実確認を置き去りにしたまま個人を標的に仕立て上げる構造は、現在も何も変わっていない。
一度貼られた不当なレッテルを剥がすことがいかに困難か。根拠のない都市伝説を「面白いから」と拡散する指先一つが、人間の生活をどこまで追い詰めるのか。荒唐無稽なデマに踊らされたあの大炎上は、デジタル時代を生きる私たちが背負い続けるべき、重い警告符であり続けている。 (出典: ラッスン 号令 雷(Yahoo!ニュース))